一日一万
仕事の依頼が増えて収入は増えたが、
時間はますます足りなくなってきた。
時間がなければ仕事を受けなきゃいいのだが、
頼まれたものを断るのが苦手というのもあったし、
次々と仕事を頼まれるという、
その状況に浮かれていたのかもしれない。
そのうち自宅での作業だけでは追いつかなくなり、
アシスタントの仕事の合間を見て、
会社で自分のイラストを描くようになった。
さすがにおおっぴらにはできないので
周りを気にして隠れるように描いていたが、
ある日、そういうことには目敏い
青木さんに見つかってしまう。
いつも笑顔の青木さんが、
この時ばかりは鬼の形相になり、
「俺はお前を一日一万で買ってるんだ。
俺の時間にお前の仕事をするな!」
とぼくを激しく叱責した。
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